トップカイザーサウンドオーディオクリニックの旅JM-Lab Diva Utopia Beで実在感あるボーカルを鳴らしたい

JM-Lab Diva Utopia Beで実在感あるボーカルを鳴らしたい



 ----- Original Message -----
 
From: "D.H"
 
To: <info@rosenkranz-jp.com>
 
Sent: Wednesday, February 22, 2006 10:29 PM
 
Subject: オーディオクリニックについて
 
 カイザーサウンド様

 横浜のD.Hです。オーディオクリニックをお願いするに当たりまして、システムの概要と音に対する希望を述べてみたいと思います。

 オーディオ機器の構成は以下の通りです。

 CDプレーヤー DENON DCD-S1
 ケーブル PIN-3EX
 高周波付加装置 FIDELIX SH-20K
 ケーブル Ortofon 7N-AC100
 プリアンプ GOLDMUND MIMESIS SR-PRE
 ケーブル KONTAC LINK503
 パワーアンプ PASS-Lab ALTPH2
 ケーブル SP-RGB1
 スピーカー FOCAL JM-Lab Diva Utopia Be
 電源タップ ナイアガラ
 電源コード AC-3EX


 他解説


 DCD-S1の下とMIMESIS SR-PREの下にはPB-REXを使用しています。ラックはローゼンクランツの2段のもの。スパイクを黒檀で受けています。電源ケーブルの交換はできませんが、音質調整のためにOrtofonの7Nケーブルを使用した自作品を途中にはさんでいます。

 スピーカーDiva Utopia Beの下の板はパインの集成材で、インシュレーターにPB-REX(A)を使用しています。

 電源ケーブルは、ナイアガラに使っているAC-3EX以外は買ったときの純正のままのものです。

 スピーカーは正面にトゥイーターとミッドレンジ、側面下部両側にウーファーが付いているものです。

 パワーアンプは純A級動作のモノブロックアンプです。スピーカーの後ろにある黒い物体がそれです。足はもともとくっついてるゴム足で、厚手の檜板の上に直置きです。以前インシュレーターや他のケーブルを試してみたことがありましたが、良い方向へ変化しなかったのでそのままになってます。


 音の好みとオーディオクリニックに望むこと

 音質的な好みは、まずはボーカルが良く聴けることです。温度感や実体感が感じられることです。CDプレーヤーにはさんでいる自作ケーブルやSH-20Kを介して使用しているケーブル7N-AC100もこの音質調整用で、使ってない方が音の解像度とかはいいのですが、音の味のようなものが感じられにくいので現在はこれらを使用しています。その上で音場感が良く、その場の空気感が感じられる音を望んでいます。

 現在の音は、好みからはあまり外れていません。自分的には結構いい音に感じています。ですので今の方向性のまま音密度・音場感が向上することが希望です。

 オーディオクリニックを頼もうと思ったのは、床が畳のためにスピーカーが本来の実力を発揮できていないのでは?というのが発端になっています。ですので畳対策がメインとなります。また、現在部屋の左側がふすまで吸音・右側が全面ガラスで反射と正反対な状況です。今現在はニアフィールドで聴いていることもあり、あまり不満はありませんが、このへんも何かうまく対策できればなあと思っております。

 ちなみにインシュレーターのPB-BOSSは好みからすると音場感や音数に音の密度感がついていってないような感じがしました。まだ聴いてませんが、PB-REX4は結構好みかもしれません。


 少ない20代のお客さんからのオーディオクリニックの要望


 D.Hさんは「ナイアガラ」を買うほどオーディオに強い思い入れを持った若き青年です。ちょっとやそっとの勇気で買える代物ではありません。その思い切りの良さには敬服します。そんな彼からJM-Lab Diva Utopia Beのスピーカーを買ったので年が明けて落ち着いたらクリニックに来て欲しいと電話があったのは昨年末でした。

 その第一段階としてスピーカーケーブルとインシュレーターの貸し出し相談を受けました。その時は畳が故にスピーカーの受け方がシッカリしていない段階では正しい判断が難しいとみてインシュレーターの購入は見送りとなり、そのかわりスピーカーケーブルのRGB-1を買ってくれたのでした。

 その時にアドバイスとして「サウンドステーション」をお勧めしましたので、今回のクリニック及びセッティングはその部分をメインテーマとして進めることになりそうです。


 超大型ヘッドホンのよう


 部屋に案内されて唖然としました。部屋の中央部でお互いのスピーカーが向き合うようにまるで大型ヘッドホン状態に置かれてあります。これでは間接音はほとんど耳に入りません。特にこのベリリュームツイーターは音がカチッとしていて、これぞオーディオの醍醐味といったキレのある高音を聞かせてくれます。幾分ホーンツイーターに似たところがあり、それはマニア心をくすぐる種類の音なのです。むしろ今は、カーオーディオの世界でブレークしております。この音は車に持って来いです!。

 いきなりそうした魅力ある音を感じさせてくれるので、大いに期待は膨らみますが、ドッコイこのフォーカルというベリリュームシリーズのスピーカーはそこから先が難しいのです。特に低音に量感があるのでそれに負けないだけの軸のシッカリした中音を構築してやらないと簡単にはスイングしてくれないのです。

 「これで満足なの?・・・」。

 両側の音の反射が大きく違う事を考えれば、色々やった中での『自分の今のベストはこれなんだ!』とD.Hさんは自信を持っているようです。ちょっと聴かせて貰ったけど私の好みではありません。ふすまとガラスという”吸音”、”反射”の反対の関係の中で果たして上手くセッティング出来るものなのか彼は疑心暗鬼のようでした


 この最近腕を上げた私の本領を発揮しましょう


 今の私にとっては朝飯前とまではいかないまでも、そう難しいとは思っていません。でも2〜3年前でしたら上手く出来なかったでしょう。そうなんです、55を過ぎて特にこの1〜2年でメキメキ腕を上げたんです。

 最も腕だけではなくインシュレーターとケーブルの性能が飛躍的に上がった部分に頼るところが大きいのも事実です。'04〜'05は「インシュレーターとケーブルのルネッサンスの年」と宣言して性根を入れて取り組みましたから良い製品が沢山誕生したのです。


 サウンドステーションの組み立て


 おそらく買うことになるでしょう「サウンドステーション」の組み立てを目の前で披露しますが、「音の調律と加速度組み立てを施すとそれは別料金になりますが如何しましょうか?」。

 『お願いします』。

 短い言葉ですが、その一言に弱い私は1個1個のネジとワッシャを組み合わせ、どの場所にどう組むか集中力を高めます。仮締めだけでも5回ほど行います。さらに締めては中指の第二間接の甲側でコツコツと叩いて音で確認を取りますので、何も考えずに締めるのと比べれば何倍も時間が掛かります。片側12個のネジなのですが合計で24個を組み終えるまでには約2時間掛かりました。


 スピーカーにインシュレーター無しでも行けそう


 畳が波打っていますのでシッカリと安定するかなと心配でしたが、Mサイズは630X525とかなり広い面積ですのでピタッと決まりました。音の反射パターンが分かり易いように、先ずは2本のスピーカーを平行にセットします。大まかではあっても良い音のする場所に入れて聴いてみます。今日の試聴に使うディスクは元ちとせ。

 サウンドステーションに乗せただけで同じスピーカーとは思えないほど素晴らしい歌声を、また楽器も美しい音色に変身です。勿論この時点ではインシュレーターは履かせていません。『ちょっとお尻が当たっただけでスピーカーが倒れてしまった』という失敗話も聞いたので出来る事なら安定性を優先したい。ひょっとするとこの調子ならインシュレーター無しで行けるかも・・・。


 試聴確認に時間を掛けるD.Hさん


 
音の向上ぶりに高ぶるものを感じたのかD.Hさんは次から次に自分にとってのフェイバリットソングを聴きます。普通確認にはそれほど時間は掛からないはずなのに大半は1曲通して聴き終えるのです。

 「この先やる事が沢山あるので、ここだけで時間を掛けると困るのでそろそろ次に行きましょうか?」。・・・と、その声を掛けなければずっと聴き入っている風でした。皆さん畳対策に悩んでおられるようですが、このサウンドステーションだけは紛れも無い特効薬です。



 電源工事と壁コンセント


 部屋の2ヶ所にオーディオ用引込み線を増設し各種有名どころの壁コンセントが取り付けられてあります。「ここが一番音が良いです」よとアドバイスしながら聴き比べしてもらうのですが、グレーの物より赤が良いし、赤よりも茶色が良い音がするのです。コンセントには茶色を選ぶべきです。何より音楽のコクが違います。

 『カイザーさん、一つお尋ねしていいですか?』。『どうしてダイレクトに配線されているところより、そこから分岐している方が音が良いのか理解出来ません』。

 当然でしょうね!、セオリーからいけばその通りなのでしょうが、色々なことがあっての結果ですが、おそらくその先に配線された線が音楽にピッタリ合う長さになっているものと思います。これは多分間違いないでしょう。

 電源工事をしたお宅を何軒かクリニックしてきて、7個も8個もある子のブレーカーからダイレクトに配線されているので同じ条件と思うでしょうが、そのコンセント毎に全部音に違いが出るのです。良いと感じたコンセントに繋がれていた配線が繋ぎ直された先に行ってもまたそのコンセントの音が良くなるのです。

 配電盤のどこの部分が音が良いのかという問題も当然出て来ます。その場合の音の感じはエネルギー的な違いとなって出てくる要素が大きいです。

 配線材の場合結構長くなりますので、配電盤の部位の違いとかブレーカーその物の個体差とかよりもはるかに大きな形となって出るのです。そうした数え切れないほどの細かなデーターは私の頭の中にキッチリと整理整頓してしまってあります。

 結局最後にはトリッキーな使い方をしていた茶色の壁コンセントを、本来の壁コンセントとして使うべく一番良い場所に配置換えしてやることにしました。そこから「ナイアガラ」に電力を送り込みます。D.Hさんその音にシッカリと納得。


 電源タップの使いこなし


 信号の流れの順に挿して下さいと、タップの使い方のノウハウをこのウェブ上で述べていますが、その教えをD.Hさん実行してくれています。ただ今日の場合はモノラルアンプですので普段とは勝手がちょっと違います。

 左から順にCD、プリ、パワー、パワーとなっております。

 これをCD、パワー、プリ、パワーに変更します。

 『どうしてですか?』。

 D.Hさんはまるで子供のようです。納得行かない事はどんな些細なことであっても質問してきます。知的向上心の高い、いわゆる完ぺき主義者です。どちらかというと私もその類ですのでよく分かります。

 音楽という信号を連続供給するにはテンポや呼吸が大切です。

 弱、弱、強、強。

 弱、強、弱、強。

 この感じで掛け声を変えると後者の方がテンポが良いのです。

 実際に繋いで比較試聴してみれば自ずと結果が出ます。

 これも予言どおり後者に決まりです。

 実は何も予言が当たったのではなく、

 過去にこうした事例があってただ学習済みなだけです。


 パスラボのアンプにピッタリのパートナーを見つけました


 それはストーブの下に使ってある木の切り株です。

 「これいいじゃないですか!」。

 『使えるかなとは思っていましたけど・・・』。

 「パスラボのパワーアンプが立方体の形をしているでしょう、形状からして四方にバランスよくエネルギーが抜けて行くようになっているわけ」。そのアンプの下に木の切り株のベースを使うと、360度の方向に成長した年輪に沿って音楽エネルギーが放出されるというもくろみです。私のイメージではこの部屋一杯に音楽が充満して、ヘッドホン以上に縦横に音が走るはずです。

 太陽エネルギーの影響によって南側に偏心した形で成長しているので、一番成長度の大きい部位をリスナーに向けます。もちろん2枚のどちらを左右に使うと良いのかも考慮した上で配置します。これを反対にすると音楽は嫌々して聴き手に届き難くなるのです。

 狙ったとおりの音になりました。和室というだけでオーディオマニアの誰もが渋い顔をするほどの嫌われ者ですが、この時点で床が畳という音質的ハンディキャップはどこにも見当たりません。見事な音の広がりを見せています。まるで最下位からいきなりトップに躍り出たようです。


 電源ケーブルに関するクリニック


 機器に繋ぐ電源ケーブルによる音質向上を試みようにも、CDプレーヤーのDCD-S1だけは開発時期が古くACケーブルの交換が効かない直出しタイプなのです。その代わりといっては何ですが、鋳物シャーシーのもたらす安定感のある音は非常に高いレベルにあり、他のものでは代用が効かない独特の世界があります。

 持って来ていたAC-RG1をとりあえずはパワーアンプに繋いで聴いてみます。良い面もありそうでない面もありちょっと判断は難しいかもしれないような変化です。こうした時にはキチンとした助言が生きてきます。

 下手に他の機器の電源ケーブルを変えようものなら却ってバランスを崩すので今日のようなケースは判断が難しいのです。その分「ナイアガラ」のタップまでは充分過ぎるほどの栄養が補給されているので、付属のACケーブルのままで行くのが無難かもしれません。

 しかしこんな場合であっても、おそらく世界で唯一無二と思われる当社ならではの音質向上方法があります。それは強引なまでの強制力を持ったプリアンプ専用の電源ケーブル「AC-Music Conductor」の導入です。

 『あのベラボーに高い奴ですよねぇ・・・!!』。

 「そうそう、33万だけど、聞くだけ聞いてみる〜?」。

 「こんな機会は滅多にないわけだから」。

 彼には「悪魔のささやき」に聞こえたでしょう。

 ”仮にどんなに音が良くっても、そんな高い物は自分の手には合わないはず・・・”。

 多分彼はそう思いながら聴き始めたことでしょう。

 「30分間はヒドイ音がしますから辛抱して下さいね」。

 「その内次第次第に良くなって行きますから」。

 10分ほどで谷を脱し、少しずつ兆しが見え始め、30分後には信じられないような音楽が部屋中に溢れ始めました。普通セオリーから行くと、プリとパワーだけでもACケーブルは3本要ります。

 ”もしもCDプレーヤーが交換可能なタイプなら4本必要”。

 ”そんな事を考えれば1本で済むのだから却って割安かも・・・”。

 オーディオマニアの都合の良い論理が己の背中をドンドン押します。

 D.Hさんの頭の中は多分そうでしょう。

 『この音を聞いたからには外す訳には行きませんよねぇ・・』。

 『・・・・・・』。

 ぶつぶつと言葉にならない声がします。

 何やら自分の財布と相談を始めたらしい。

 行けるとみたのでしょう。

 『メールで請求明細を頂けますか?』。


 最終段階の調整


 ここまで基礎体力が上がるとスピーカーをさらに良い音のするポジションに追い込んでも破綻する危険性が少なくなります。前後と左右の位置を10ミリ〜30ミリほど再調整します。ピンに入ると別世界の音が出現するのです。私が当初予定していた音よりはるかに高いレベルの音が出るようになりました。こうした音を一旦脳が認知したなら死ぬまで忘れることはないでしょう。


 ----- Original Message -----
 
From: "D.H"
 
To: <info@rosenkranz-jp.com>
 
Sent: Tuesday, February 28, 2006 2:18 AM
 
Subject: 訪問後についてとその他
 
 
貝崎様

 オーディオクリニックに来ていただいたD.Hです。

 先日はありがとうございました。

 その後いろんなソフトを聴いてみるに、どれも申し分のない鳴り方です。じっくり集中して聴いても欠点もなく、雄大に良く鳴っています。

 一番の変化は、低域の時間軸がぴったり合ったからか、ソフトによっては鳴りすぎに感じていた低音域が今の状態で鳴らすと全く問題ない状態で鳴っていたりすることです。おそらく今までは低域がボケてるかかぶっているかしてそのように聴こえていたのだろうとは思います。

 あと、録音が悪いソフトでも良く鳴ってます。捨てようかと思うくらい音の悪い(特にボーカル以外の音の存在感が希薄でイマイチ)ソフトが、今になってみたらえらいいい音で鳴ってます。他の普通のソフトよりも良く鳴ってます。

 いやはや、びっくりです。全く問題ありませんがもはやこのシステム、録音の良し悪しの判断には使えませんね。後は本当に欲を言えば、ボーカルをもっと強調できたらなあとも思いますが・・・以前の聴きかたの癖が残っているだけかもしれません。


← Back     Next →